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相談・情報

多文化共生スポット ワールドキッズ(磯子区の学習支援教室紹介)

外国にルーツのある子どもたちの学習をサポート

 「多文化共生スポットワールドキッズ」(以下、ワールドキッズ)は、外国から来た主に小・中学生を対象に学校の勉強をサポートする「学習支援教室」です。土曜日の根岸中学校コミュニティハウスと水曜日の洋光台地域ケアプラザで、約20人のボランティアが子どもたちの学習を支援しています。
 代表の王広子さんと、顧問の金子美奈子さんにワールドキッズの成り立ちや現在の活動状況について、うかがいました。

(左)王広子さん、(右)金子美奈子さん

中国への興味から 上海へ留学

 横浜で生まれ育った王さんは、横浜中華街が身近にあったこともあり、子どものころから中国に興味があったといいます。日本の大学で国際関係論を学んだ後、興味のあった中国を体験してみたいと上海の復旦大学へ留学。3年間を中国で過ごし、地元の人とも深い絆が生まれたそうです。その後は中国語の語学力を生かして語学系出版社に就職。中国人の方と結婚し磯子区に住まわれるようになり、お子さんは根岸小学校に通うことになります。約10年前の根岸小学校にはまだ外国から来た子どもは少なく、最初は中国から来た子どもが3人、翌年は6人、その次の年は12人と倍々に増えていくのを目の当たりにしたといいます。

 外国から来た子どもが増えるに従い、学校からの依頼で保護者面談の中国語通訳を引き受けるようになった王さんは、「日本語が分からなくて困っている子どもたちを、なんとかしてあげられないか」という気持ちが強くなったそうです。

 そこで、「自分の家でもできるかも」と、近所に住む外国から来た子どもたち5人を呼んで、小さな学習会を始めます。2016年2月の事でした。その頃に以前、学習塾をされていた金子さんと知り合い、力を借りました。

 日本語がまだよく分からない子どもたち向けの学習会ですが、「日本語を教えるというよりも、勉強を見てあげたい」という思いから、算数や国語など学校の勉強のサポートを行い、成績の結果がきちんと出るようなフォローを心がけてきたといいます。

 5人から始まった小さな学習会でしたが、親御さんたちのクチコミで生徒は増え、現在、根岸中学校コミュニティハウスでは小・中学生合わせて30人以上、洋光台地域ケアプラザでも15人以上の子どもたちが通うまで大きくなりました。

母語を自由に使うことができる学習の場

小学生の教室

 根岸中学校コミュニティハウスを取材した日は、開始時間の午後3時30分が近づいてくると、小・中学生が一人、二人と次々と教室に集まってきました。子どもたちは、友だちと会うと、ひとしきりおしゃべりをしたり遊んだりしています。「根岸教室には、中国から来た子どもたちが多く通っています。普段、学校では自分の国の言葉で話せない子どもたちも、ここでは友だちと母国語で自由に話せるので『安心できる居場所』になっていると思うんです」と王さんは教えてくれます。

中学生の教室

 この日集まった子どもたちは小学生が約10人、中学生が5人程。「参加者は多い日もあれば少ない日もあります。今日は少し人数が少ないですかね」と王さん。小学生と中学生は二つの教室に分かれ、先生と生徒が隣合ったり向き合ったりしながら席に着きます。最初は教室を走り回っていた子どもたちも、しばらくするとボランティアさんの隣で熱心に勉強を始めていました。

学習教材を選ぶ子どもとボランティアさん(上)、机の上に並ぶ寄付されたノートや学習教材(下)

 小学生の教室の後方には学年別の教材や寄付で集まったノートが積み重ねられています。そこではボランティアさんが、その日の教材を子どもと一緒に選んでいる姿がありました。中学生の教室では、期末テストの結果を見せながらアドバイスを求める中学生に、テスト結果の出来栄えを褒めながら、間違った部分を丁寧に説明するボランティアさんの姿がありました。

 教室が用意している教材を使用したり、子どもたちが持ってきた宿題を見たりと、子どもたちひとり一人に合わせた学習が行なっている姿が印象的でした。

一対一のサポートを目指したい

 取材日の教室では、子ども一人もしくは二人に対して、一人のボランティアさんがついて勉強を見ていました。

 「教室にやってくる子どもは一人一人、日本語のレベルも習得能力も違います。できれば、一人の生徒に一人の先生がつきマンツーマンでその子の学習や生活環境をみてあげたい」と王さんは言います。同席した金子さんも、「子どもをサポートするボランティアを随時募集しています。興味のある方は、ぜひボランティアとして関わってもらえたら」と話していました。

勉強をする子どもたち

保護者のサポートも大切に

 さらに王さんたちが気にかけていたのは、日本語が得意ではない保護者のことでした。
 「保護者の方々が日本語が分からないことで、学校からのお便りやお知らせ、入試情報などが読めない状況にあり、『情報弱者』になってしまっていることが気にかかっている」といいます。そこで、ワールドキッズは保護者の方とも随時、個別面談を行い、お子さんの進学に関するアドバイスをしています。王さんは、外国から来た子どもの保護者へも、「何かお子さんのことで困りごとがあったらぜひ連絡してほしい。何かお役に立てるかも」と話します。

 また金子さんは「ワールドキッズの子どもたちの成長を見るのは楽しいし、人生のやりがいにもつながります。ボランティアに少しでも関心のある方は、難しく考えないで、一緒に楽しく活動しましょう」 と明るく語りかけています。

ワールドキッズの未来

 ワールドキッズでは、毎年3月に中学3年生の子どもたちの『卒業を祝う会』を開催しています。来日当初、全く日本語が話せなかった子どもたちが、高校に進学する姿を見ると「本当にこの子たちはがんばったんだなぁ」と、感慨深いものがあるという王さん。

 先日、中学生で来日し日本語があまり話せず、ボランティアや周りの子どもたちとうまくなじめなかった子が、高校生になりワールドキッズのお手伝いをしにきてくれました。すっかり落ち着いて、年下の子どもたちの面倒をみたり、勉強のアドバイスをしてくれる姿に、成長の喜びを感じたといいます。

 「私たちの目指す未来は、日本語が話せなかった子どもたちが、数年後に大きくなってワールドキッズに戻ってきて、子どもたちの悩みを聞いたり、アドバイスしてくれる存在になってくれることなんです」と、王さんは将来の夢を話してくれました。

多文化共生スポットワールドキッズ

Web:https://worldkids-y.org/(外部リンク)

教室の名前曜日時間費用場所
根岸教室毎週 土曜日15:30~17:30無料根岸中学校コミュニティハウス(JR根岸駅から徒歩5分)
洋光台教室毎週 水曜日16:00~18:00無料洋光台地域ケアプラザ
(JR洋光台駅から徒歩12分)

ボランティア募集中:ワールドキッズでは、外国につながる子どもたちの学習支援をするボランティアを随時募集しています。詳しくは、ホームページからお問い合わせください。

日本語教室・学習支援教室インタビュー

いそご多文化共生ラウンジでは、日本語教室・学習支援教室を取材し活動されている方へのインタビューを行っています。日本語教室に興味をもっている人に、教室の様子やボランティア活動をされている方々のことを知ってもらう機会にと思っています。ぜひ、お読みいただけたらと思います。

第1回 多文化共生スポットワールドキッズ
第2回 日本語を楽しむ会
第3回 磯子日本語の会 夜の会話サロン
第4回 日本語を話す会